安保
はい。あたりはつけていたのですが、実際に見つけたときは何か違和感を覚えました。それまでは、T細胞は骨髄でつくられていると思われていました。それに、体内の異常細胞を殺す「自己応答性」をもった特殊なT細胞だったのです。それを、「胸腺外分化T細胞」と名付けたのです。その後の研究から、肝臓だけでなく腸管、子宮、皮膚にも存在していることが分かっています。
免疫学者の多田富雄先生が、「免疫学は、最初に問いかけた『自己とは何か』、『非自己とは何か』という基本的なところに必ず帰ってくるはず」とおっしゃっています。これは、T細胞が胸腺で「非自己認識」の教育を受けることと関連しています。
しかし、私はこの胸腺外分化T細胞を発見したことにより、多田先生とはちょっと違うんです。この「自己応答性」と言う観点から言えば、自己か非自己かの論理ではなく、「異常自己を認識する」、「認識した異常自己を排除する」ということがキ−ワ−ドになるからです。 |