安保
そういうことになりますね。
一つ、最初に私の忘れがたい体験を話しておけましょう。研修医時代でしたから三〇年ほど前、抗癌剤治療の悲惨な状況を体験しています。
そのころ、青森の病院で内科医として研修しながら、二年間で一五人の肺がんの患者さんを担当しました。私も先輩医師の治療を踏襲して、抗がん剤治療を行っていました。何種類かの抗がん剤を組み合わせて患者さんに投与すると、がんは最初、見事に小さくなるのです。そして、患者さんは退院していきます。
でも、患者さんたちは、必ず一年以内には再発して病院に戻ってきました。そのころになると、体はすっかり弱りきっていて、既に末期の状態です。もはや治療もできず、点滴で栄養補給だけ。二、三ヵ月そうした状態が続いて、亡くなっていく…。
それも、私が担当した一五人の患者さん全部が、ですよ。誰も助からなかった。これは、「抗がん剤は癌を治していない」ことの証明であり、私の原点と言ってもいい出来ことでした。
それに対して、「それは、三○年も昔の抗がん剤治療だからでしょう」と言う人もいるでしょう。しかしながら、抗がん剤治療はそのころとちっとも変わっていないのが現状です。
抗がん剤だけではなく、現代医療で使う薬というのは、交感神経緊張状態をつくり出してしまうものが多いのです。痛み止め、ステロイド、エルド−パなど、ほとんどがそうです。
エルド−パというのは、パ−キンソン病で使われる薬です。パ−キンソン病は全身の筋肉が硬直してしまう病気で、脳内の脳幹周辺の神経伝達物質であるド−パミンの減少によって起こるといわれています。
ですから、ド−パミンの前駆体であるエルド−パという薬でその量を補うというのが、現在のパ−キンソン病治療の主流です。エルド−パを使うと、最初は確かに出血がよくなってきます。交感神経緊張状態を引き起こしているわけです。ところが、何ヵ月もその状態が続くと、結局効かなくなってきて、最後は筋肉がガチガチに硬直してしまう。
結局、一番いい治療法は薬をやめて、なるべく手足を動かすように体操でもして、だるくなったらキノコでも海草でも食べるようにする。そうしたら、一週間ほどすれば話せるようになるし、震えも止まります。 |