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がんの治療法について
【対談】安保 徹 & 上野 紘郁

安保

はい。あたりはつけていたのですが、実際に見つけたときは何か違和感を覚えました。それまでは、T細胞は骨髄でつくられていると思われていました。それに、体内の異常細胞を殺す「自己応答性」をもった特殊なT細胞だったのです。それを、「胸腺外分化T細胞」と名付けたのです。その後の研究から、肝臓だけでなく腸管、子宮、皮膚にも存在していることが分かっています。
免疫学者の多田富雄先生が、「免疫学は、最初に問いかけた『自己とは何か』、『非自己とは何か』という基本的なところに必ず帰ってくるはず」とおっしゃっています。これは、T細胞が胸腺で「非自己認識」の教育を受けることと関連しています。
しかし、私はこの胸腺外分化T細胞を発見したことにより、多田先生とはちょっと違うんです。この「自己応答性」と言う観点から言えば、自己か非自己かの論理ではなく、「異常自己を認識する」、「認識した異常自己を排除する」ということがキ−ワ−ドになるからです。
上野

哲学的ですね。
安保

全くそのとおりです。そう考えていくと、面白いことに病気や症状とリンパ球が重なってくるのです。ガン、自己免疫疾患、マラリアのような細胞内に寄生する病気、老化、妊娠、骨髄移植、この六つは、難病とか、人間が逆らえない現象とでも言えます。これらは皆、胸腺外分化T細胞のテリトリーでもあるんです。
でも、なかなか理解してくれる人が少ない(笑い)
上野

先端の思想は、そう簡単に理解してもらえませんね。
顆粒球の免疫力
上野
もう一つ、顆粒球の研究も先生の免疫学の特徴ですよね。
安保

はい、私たちの体は、リンパ球だけに守られているわけではありません。顆粒球は、ウイルスなど大きな異物を食べて処理しています。処理が終わると、化膿性の炎症を起こします。膿は、顆粒球が闘った残骸です。
体内で任務を全うした顆粒球は強力な活性酸素を出しながら、臓器や粘膜で組織破壊をしながら死んでいきます。組織破壊が進むと、がんや潰瘍を引起します。
抗酸化作用といって活性酸素に対抗する能力もあるのですが、顆粒球が多すぎると手に負えなくなります。
上野

先ほども、ストレスは交感神経を刺激して顆粒球過多を招いてさまざまな病気の元凶となる、とおっしゃっています。そうなると、「やはり顆粒球は悪者なんだ」と思われる方も多いと思いますが、そうではないわけですね。
安保

私が強調していることは、「リンパ球過多も、顆粒球過多も、どちらも病気になりやすい。大事なのはそのバランス」ということなんです。先ほども、顆粒球が54〜60%、リンパ球が35〜41%の範囲内が理想的、と言いましたが、この範囲なら、病気を予防したり、たとえ病気になっても自然治癒力が働きます。
上野

顆粒球も、骨髄からつくられるのですね。
安保

そうです。リンパ球や顆粒球がどのようにつくられるのか、説明しておきましょう。
白血球は骨髄の中にある造血幹細胞から生まれ、リンパ球、顆粒球、マクロファ−ジに成長します。リンパ球は、B細胞、T細胞の二種類。そのうち、T細胞だけはその後も「胸腺」という、いわば“大学”へ進んで「非自己認識」の教育を受け、プロとして一人前のT細胞になっていくのです。
このコントロ−ルもT細胞の中でそれぞれの役割があります。異物を発見したときに、実際に「抗体生産!」と指令を出すのはヘルパーT細胞、これだけ抗体を出せばOKと「抗体生産終了!」と指令を出すのはサプレッサーT細胞。T細胞の中にはもう一つ、直接異物を攻撃する力を持つキラ−T細胞の三種類があります。
胸腺は、T細胞が集まっている場所です。だいたい10歳前後が一番パワフルです。その後、思春期ごろから機能が衰え始め、顆粒球が増えてくる。成人、老人になるに従って、胸腺は脂肪になっていきます。これは、ガンが発生しやすい年齢にも関係していきます。

  対談内容

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