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がんの治療法について
【対談】安保 徹 & 上野 紘郁

安保

そうです。自律神経というのは、内臓や血管を構成する、体内にある約六〇兆個と言われている細胞を調節しています。と言っても、自分の意思でコントロ−ルすることはできません。生命維持のために調節する仕組みを持ち、眠っていても心臓は動いているのです。呼吸、心拍、体温、血圧、排尿など、すべて自律神経によって調節されています。
自律神経は、さらに交感神経と副交感神経から成っています。この二つは反対の働きをしながらシ−ソ−のようにバランスをとり、体調を維持しているわけです。
一つの器官で交感神経は「動」の働きを、副交感神経は「静」の働きをしています。交感神経は心臓の拍動を高め、血管を収縮させたりするのに対し、副交感神経はその反対に心臓の拍動を抑えたり、血管を拡張させたりしているのです。交感神経は主に昼間に働き、アドレナリンという神経伝達物質が分泌されて活動的になります。副交感神経は休息時などのリラックスしたときに働き、アセチルコリンという神経伝達物質を分泌します。
上野

その自律神経が、内臓や血管だけでなく、免疫力を左右する白血球まで調節していることが分かったわけですね。
安保

白血球を構成しているのは顆粒球とリンパ球です。その二つで白血球の約95%という大部分を占めています。
血液に乗って全身を循環し、ウイルスや異物を処理していきます。顆粒球が56〜60%、リンパ球が35〜41%の範囲内が理想的です。自律神経のバランスが保たれ、免疫力が機能して病気も予防できます。
顆粒球は交感神経が分泌するアドレナリンのレセプター、要はアンテナのようなものを持っていて、リンパ球は副交感神経の分泌するアセチルコリンのレセプターを持っています。したがって、交感神経が刺激されると顆粒球が増え、副交感神経が刺激されるとリンパ球が増えるのです。昔から「病は気から」と言われているように、ストレスが自律神経を乱すことを経験的に知っていたのです。私たちは、このことを科学的に解明したわけです。
激しいストレスは、交感神経の緊張状態を引起します。この刺激によってアドレナリンの分泌が過剰になり、顆粒球がどんどん増えていきます。そのため自律神経が乱れ、免疫力が低下してさまざまな病気を引起してしまうのです。風邪も、ガンも、同じ仕組みで発症します。
上野

元凶であるストレスを緩和・解消すれば自律神経の働きが正常に戻り、免疫力が回復してどんな病気でも治癒に向かうというわけですね。現代医療では、元凶のストレスを取り除くことはできません。
安保

むしろ増やしている。だから、病人を増やしたり、死に追いやったりしているのです。
対症療法と言われるように、現代医療はその症状、その部分しか見えない。例えば熱や咳など、患者さんが訴える不快症状を取り去るために、医師は薬を出します。患者さんも、当然のように飲む。しかし、熱も咳も自然治癒にとっては大切な一過程なのです。また、薬はほとんど化学物質であり、その成分自体が人体にとってはストレスになるのです。
おおまかですが、これらが「未来免疫療法」の基本です。
腸や肝臓に棲むリンパ球
上野

そもそも安保先生は、リンパ球の一種である「胸腺外分化T細胞」を発見して世界的に有名になり、「未来免疫療法」という独自の理論を編み出されたわけです。
いつも思うのですが、リンパ球や顆粒球のお話をうかがっていると人類、というより生物の発達の歴史をたどっているような、壮大な物語を思い浮かべます。
安保

そうですね。私たちの体内には、原始から今までの歴史が刻まれています。そんなことに思いを馳せたりする人は、少ないと思いますが(笑い)。
人間がまだ存在しない十数億年も前、生物は単細胞から多細胞へと進化していきました。初めは、体を覆う皮膚(外胚葉上皮)と口から肛門までの腸管(内胚葉上皮)だけの生物でした。棲んでいる場所は海です。
皮膚は常に海水を受け、腸には海水をただようさまざまな有毒物質が入ってくる。この段階で、おそらく生物にはマクロファ−ジという大食細胞が備わったであろうと思われます。食べ物の中に入ってくる異物を楽に吸収するように、また有害なものを疑縮させる働きで、マクロファ−ジが消化管を取り巻いていたんですね。そうでないと、生物は生き延びられなかった。
そして、次に腸が少しずつさまざまな臓器に変貌していき、肝臓、膵臓、胸腺、肺……と形作られていきました。クラゲなどのニ胚葉生物から寄生虫やミミズなどの三胚葉生物に進化したころ、原始顆粒球と原始リンパ球が出現します。皮膚、えら、腸、肝臓を持った魚の先祖です。ここで、NK細胞、T細胞などのリンパ球が、だんだん一定の場所でしか作られなくなっていきました。
このような経過をたどり、肝臓と胸腺とでリンパ球をつくり出すようになったのです。
上野

安保先生は肝臓からT細胞を発見されたのですね。

  対談内容

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